Interview Karatsu Kensuke

竹下:皆さんこんにちは。ここからは夜の動物たちの119番〜つくば夜間救急ノート〜をお届けいたします。この番組のナビゲーターを務めます。フリーアナウンサーの竹下梨帆です。そして本日の番組MCは、つくば夜間動物病院院長の唐津健輔先生です。よろしくお願いします。
唐津:よろしくお願いします。
竹下:つくばということは、茨城からいらっしゃったのですか?
唐津:そうですね。朝まで仕事をして、そのまま渋谷に来ました。
竹下:夜間動物病院ということですが、今日は何時まで働いていたのですか?
唐津:病院の仕事が終わったのは朝の9時前ぐらいですかね。
竹下:すごいですね。夜間専門の動物病院なのでしょうか?
唐津:そうです。昼間はやらず、夜のみ診療する動物病院を経営してます。
竹下:夜間だけというのは、全国的にも珍しいのでしょうか?
唐津:昼も行っていて、夜も診察するという病院は、そこそこあると思うんですけど、昼間はもう完全に寝ていて、夜だけの病院は結構珍しいと思います。
竹下 :私も愛知県の実家で犬を2匹飼っているのですが、夜間の動物病院は周りになかったですね。
唐津 :そうですよね。愛知県にもあるにはあるのですが、本当に少ないと思うので、県内にあっても遠くていけない場所という場合もあると思います。

竹下:そもそも夜間病院になかなか馴染みがない方も多いと思うのですが、実際にどんな方が来院されるのでしょうか?
唐津:よく「昼間仕事していて、夜病院に行く方が多いのか」と聞かれるのですが、実際に来る方は、そういう括りはないですね。いろんな方がいらっしゃいます。また、つくば市内の方が一番多いですが、隣の福島や栃木から来る方も多いです。
竹下:それは夜間の動物病院が、福島や栃木の方にはないからということでしょうか?
唐津:そうなりますね。その人たちにとって一番近い夜間の動物病院がつくば市ということになりますので、2時間かけて来てくださる方も結構いますね。
竹下:そうなんですね。夜、痙攣を起こしてしまったなど、具合の悪いワンちゃん、ネコちゃんが多くいらっしゃるのですか?
唐津:見るからに危ない痙攣や呼吸が苦しそう、倒れてしまったという方も多いですし、後は目の前でおもちゃ食べてしまった、ネコちゃん同士で喧嘩して怪我しちゃったなど、そういう方々も多いです。
竹下:でも具合が悪くなった時に、夜間病院があるというのはすごく飼い主さんにとって安心ですよね。
唐津:そう思っていただければいいなと思い夜間の病院を始めたのですが、やはり始める前に考えた需要と比べると、予想を超える需要がありましたね。
竹下:そもそも、唐津先生はどうして夜に病院を開こうと思われたのでしょうか?
唐津:獣医として15年働いているのですが、そのうち8年間は昼に働いている獣医でした。昼の病院にいても、夜間に入院患者の管理や緊急で電話がかかってくることもありました。ただ、やはり昼に働いているので眠いですし、昼の仕事にも影響が出るなど、患者さんに向き合いたいのにしっかり向き合えないというジレンマを感じていました。
竹下:そうだったのですね。
唐津:それで自分で独立しようかなと考えた時、つくば市にも昼の動物病院は結構あります。そのため「夜間の病院があればすごく助かるかも」と考え、夜間動物病院を開院しました。
竹下:素敵ですね。開業されて、印象に残った症例や出来事は何かありましたか?
唐津:救急をやっていると病院に来るときは本当に歩けない子が、数時間後には立って歩いて尻尾振って帰るみたいな現象に結構出会います。
竹下:なぜそういった現象が起こるのでしょうか?
唐津:対応が早いからだと思います。朝まで待って治療することと比べると、すぐ治療すると治るのも早いです。それをすごく実感して、やりがいの一つになっています。

竹下:実際、夜間の病院のスタッフさんはどのような働き方になるのでしょうか?
唐津:夜間病院は基本的に、病気の動物が現れないと仕事がないため、昼に比べると待機している時間が長いですね。
竹下:昼の病院の方が、コンスタントに患者さんいらっしゃる感じですか?
唐津:歯医者さんをイメージしていただくとわかりやすいのですが、予約制でも、常に患者さんがいて、終わったら次の患者さんが来ますよね。夜間病院は患者さんが来ないと病院が動き始めないため、患者さんが来ない間はただただ待っています。患者さんが来た時は、全速力で対応をします。
竹下:何人体制で病院を回しているのでしょうか?
唐津:獣医師が3人から4人、看護師さんが5人前後ですね。
竹下:10名くらいの方が働かれているのですね。スタッフの人数としては多い方ですか?
唐津:夜間病院としては、すごく多いと思います。
竹下:なぜそんなに手厚い体制なのでしょうか?
唐津:最初は僕も仕事が来たらいいなと思っていたため、1人でなんとかなる範囲でした。ただ、需要があるということが分かり患者さんが増えると、1人では難しくなりました。健全な診療ができるのは1人の獣医師に対して、4、5件ぐらいになります。それ以上患者さんが来ると結構パンクしてしまいます。
竹下:そうなると、例えば治療しながら他の診察しなきゃいけないみたいな状況が起こりうるということでしょうか?
唐津:そうです。あとは患者さんの待ち時間も気になってしまいますね。1日の患者さんが10人を超える場合は、獣医師さんが3・4人いないと良い診療が難しくなると考えています。
竹下:そうですよね。獣医師さんが一人しかいないと、1匹のワンちゃん、ネコちゃんに向き合えないですよね。
唐津:向き合うというのがすごく重要なワードですね。僕も日中で働いてるとき、それこそ1日20件とか30件とか見ていましたが、どうしても深掘りできないです。もう少し話しをしたいけれど、「次も待ってるし、この話は来週にしよう」ということが結構ありました。そのため、もう余すことなく一人の患者さんに向き合う仕事をしてみたかったのです。
竹下:そうだったのですね。今後夜間動物病院に関しての、夢や目標はありますか?
唐津:まずは、何かあった時のために飼い主さんに夜間病院があることを知っていただきたいですね。あとは動物病院業界の方にも「意外と夜も働ける」というのを、知ってもらいたいですね。
竹下:夜間動物病院があることを知ることができたのが私も大きくて、夜中に何かあった時は「夜間の動物病院に連絡しよう」という発想も生まれました。多くの人に私も知ってほしいなと思いました。
唐津:そうですね。実は茨城県内でつくば市だけではなく水戸市に2拠点目を作りましたが、他の地域には絶対足りてないと思っていますので、自分でやるかどうかは別として、これから夜間病院が増えていくといいなと思っています。
竹下:なかなか地方には夜間病院がないと思いますので、先生ぜひ全国に広げてください。
唐津:頑張りたいですね。